松田綾子さん・リポート[3]
吉田 松田さんの本「食料品完売マニュアル」を僕読ませていただきましたけど、デパートのマネキンの人に読ませるだけではもったいないですね。ちょっと文章替えたりすれば、即営業に使えますよ。
松田 ありがとうございます。いろんな方にそういわれたので、普通の営業向けに「売れる営業の法則」というのを新しく書き直しました。
吉田 この本読んで思ったのですが、ものを売る前にまず自分を売ってますよね
松田 そうですね。マネキンという仕事は、毎日売る商品が変わるんですね。何を売るかというのは全然次にならないとわからないんです。
私はよく見る見られるの関係っていうんですけど、人が寄ってくる人の条件っていうのは、よりエネルギーの強い方が必ず見られる方に立ち、よりエネルギーの弱い方が見る側に立つという演劇界の法則なんですけども、人と人が出会ったときに一瞬で決まる力関係っていうのがあるんです。「パワープレイ」ともいいますけれど、それはホントに一瞬で動物的なカンでパッと決まるんですが、デパートでも、この人輝いてるとか、この人はエネルギーがすごい、と思ったらフラーッと寄っていくんですよね。
たとえ販売員といえども役者立ちっていうんですけど、ちゃんと背筋を伸ばして首を緊張させて、肩甲骨をぐっと寄せて爪先立ちに近い状態で立ちますと、私はチビちゃんですけど、けっこう大きく見えるんですよね。ちゃんと立つと。声も、ここから上でしゃべる人は多いんですが、イヌとかでも、ワンワンいうときって全身でいうんですよね。それと同じでちゃんと身体で声を出す。そしたらダラーッと立ってここだけで声を出している人と、見た目にははっきりわからないけど、やっぱりパワーアップして見えるんですね。そういうふうにぱっと見にはわからないけれども、明らかにいろんな力が入っている、いろんな所に負荷がかかっているんですね。そういう姿勢っていうのは、すごくパワフルに見えるんです。そうすると、ただすれ違っただけの人でもこっちが見る側、こっちがパーッとオーラを出して見られる側ってなるんですよ。
だいたいの販売員の人は、日常の風景に紛れこんでしまってますよね。マネキンさんって。
吉田 うん、そうですね。あそこにもマネキン、ここにもマネキンがただ立っているって感じだよね。
松田 どんな職業でも関係なく、自分が輝いて風景に溶け込まないで、ここは私の劇場、ショータイム。来てくれたらおもしろいもん見せまっせ、っていう気持ちでいると、やっぱり付加価値があるから来てくれるわけですよ。それは別に「もの買うてくれ」ということではなくて、ここで頑張ってる私のショーを見て、っていう気持ちなんです。
吉田 そういうのは演劇を学ぶときに学んだのですか?
松田 そうなんです。
吉田 なるほどね。短時間に、その商品なら商品に、それだけパッと集中して、極端な言い方すると成りきってしまうんですよね。
松田 そうです、その商品の良さに自分がほれ込むっていうか。
吉田 僕の場合は、自分で作って自分で売っているわけですけど、僕が温泉のフロントに立って売ったら、売れるんですよ。
松田 そういう熱意って伝わるのでしょうね。
吉田 買ってくれる人の中には「これを作った社長さんだ」っていってそういう部分もある。僕と話ができる、僕から情報を、質問もくる、それに答えるてやる、そういう部分で、すごく良いお客さんとの会話も生まれるし、ほとんど百発百中買ってくれるね。
松田 お客さんにしてみたら、開発した社長自らの説明があるなんて付加価値がずいぶんあるわけですね。
吉田 そういった自分の思いっていうかそういうものを、自分のところの社員に伝えたいけどなかなか伝わらない。いま松田さんみたいな社員が三人もおったら、すごく発展するだろうなあ。
松田 無意味な熱意がありますからね。
吉田 いやいや、短時間で次のステージというかな、翌日はスーパーに行ったりデパートに行ったりで、商材 も今日はみかん、明日は苺、あさっては干物。極端な話、そうなるわけでしょ?
松田 仕方がないんですよ。毎日違うものに埋もれていますが、その日のお客様に、即お伝えしにいかねばいけません。
吉田 そういうことを社員なら社員に伝える、僕もそうなってほしいと思うんだけど、そうするためになんかコツとかあります?
松田 私はもともと営業していた時代、ものが全然売れなかったんですね。医療関係の仕事をしてたときに。ある医療器具を売ってたんです。もうさっぱり売れなくって、ダメ社員って感じだったんですけど、マネキンを始めてから怒涛のように売れるようになったんですよ。
吉田 ほう。その秘訣はなんでしょう?
松田 わたしは物を売る前に何をするかと言いますと、そこの社長さんの商品にたいするコダワリや想いを知りたくてバックグラウンドを調べたりします。
吉田 ああ、そうなんだ。僕もサラリーマン時代にそういう経験があるけど、パンフレットとかカタログの中身が100%入ってる人は超一流の営業マンですよ。
松田 やっぱり、そうですか。だから、まずそこの会社のパンフを取り寄せて、マネキンの詰め所に資料が無ければネットとかで関連のあるものを調べます。で、競合の所も見て他社との違いをひととおり頭にいれて、そのうえで社長さんの書いた文章なり本なりがあったら、ちゃんとそれなりに「こういう方なんだなあ」って勉強します。共感できたら、「よし、この社長さんのお役に立つんだ、この人の代わりに私は売るんだ」っていう気持ちになりますね。でもなにかわからない商品だったら、共感のしようがないんですね〜。自分の会社の事だったら、やっぱり上司なり社長さんがパンフレットとかなんでも語りかけてもらって、どういう熱意があってこの商品を売りたいのかっていうことを、伝えてほしいですね。
吉田 僕は、ニュースレターや、小冊子を書いていますよ。
松田 社長の書かれるニュースレターは、お客様との距離を近くに感じられますよね。
吉田 そうやって少しずつ情報を与えています。
松田 あれは、本当にいいですね。親しみが湧きます。
吉田 そうか。お客様だけでなく、社員にもメルマガで発信すればいいのかもしれないね。最近入った社員は、なんでこの商品ができあがったのか知らない子もいますからね。これは、僕が反省するべきだね。
松田 そういう新入社員が「これ、何?」って言われて説明できるのかって言われたら、なかなか説明できないですよね。やっぱり自分を納得させることができたら人も納得させられる、と今思うんです。データが揃ってて、自分に信念があって、それが他と比べて、納得できたら同じことを他の人に、友達に言うような感じで「どう思う?」っていうふうに言うと「それもそうだね」っていうことになりますよね。だから、自分が納得していないものはすすめられないのではないでしょうか?
吉田 そうだよね。
松田 だから、販売員が勉強しないっていうのは信じられないですね。
吉田 僕は自分をところの商品っていうのは、開発段階から自ら実体験をしているんです。
松田 社長自らですか?
吉田 はい。そして、納得したものしか売らないんです。
松田 なかなか出来そうで出来ないことですね。
吉田 この育毛剤なんかでもそうですよ。売り出すまでに13年かかっています。
松田 え〜〜っ!そんなに、長い間研究されていたのですか。すごいですね。
吉田 実際に、そういう自分でやったことの結果としてやってるんで、僕自身はすごく自信満々なんですよ。
松田 やっぱり社長さんが自信満々だとうれしいですね。私のような依託販売員が「じゃ今日これデパートで売ってきてね」って言われたら、社長さんがそうやって信じてやってるって聞いたら13年を背負ったという気持ちになりますね。わたしが社長さんに代わって、売りに行きたくなりました!(笑い)
吉田 じゃあ、パワーマネキン式連鎖で、じゃんじゃん売ってきて貰おうかな。ハハハハハハハ(爆笑)
パワーマネキン 松田綾子さんの脚スラリポート終わり・・・ |